【感想(舞台)】舞台版「魔術士オーフェン」という最高傑作

www.orphen-stage.com

友人に誘われて舞台版「魔術士オーフェン」を観てきました。

演劇を見るのはこれで二度目(一度目は天井桟敷レミング)。
しかも原作付きのものは見たことがないし、
多少近代的要素もあるとはいえハイファンタジー

原作付き作品という意味では、
直近にゴミ・ストーリーユア・ストーリーを見ていたのもあり、
どうなるかなあ、楽しめるかなあと不安に思いながら観に行ったのですが……。

え、圧倒的に面白いやん(混乱

もう一度言おうか。

圧倒的に面白いやん(確信

とにかく再現度が凄かった。原作愛に満ち溢れていた。
ストーリーは決して原作をぶち壊したりしなかったし、
キャラクターはまるで生き写しかと見紛う程に魂が込められていた。
それでいて舞台としての良さを存分に活かしてもいて、
隅から隅まで余すことなく楽しむことが出来ました……素晴らしかった……。

何もかもが素晴らしかったのですが、
その中でも印象深い点を挙げると以下の通りです。

  • 原作の再現度がとにかく素晴らしかった
  • キャラクター作りがあまりにも完璧すぎた
  • プロジェクトマッピングなどを利用した音と光の演出
  • 舞台ならではの構造を利用した心理表現

舞台の中央よりやや客席側にカーテンのような仕切りを下ろすことが出来、
要所要所でそこに映像を映し出すというプロジェクトマッピングを利用する手法
取り入れられていたのですが、これは素晴らしかったですね。

こってこてのファンタジー要素であるドラゴンとかどうすんだろうと思っていたのですが、
なるほど、今の時代だからこそこういう描き方が出来るんだ、と感心させられました。

だからといってこれが決して映像頼みという訳でもないんですよね。
仕切りが半透明で奥が見えるようになっており、
来ないでと叫ぶアザリーにドラゴンの映像が重なって見えるなど、
あくまで主体を演劇に残したまま映像を利用するという手腕はお見事。

特に印象深かったのは冒頭、オーフェンが目覚めるなり魔術を放つシーン。
自分で壊した部屋を、自分でまた魔術を使って直すところで、
割れた鏡が元に戻るのを見た時にはもうこの舞台にのめり込んでましたね。

また、正直公式ホームページを見た時にはコスプレ感半端ねえと思っていたキャラも、
動き出すとあまりにもそのキャラクターらしさに溢れていてびっくりしました。
まるで違和感がない。それどころか、各キャラの良さを限界まで引き出してくれている。
だからどのキャラクターも好きになれる。
色んな感情に自然と寄り添えることで、物語がどんどん立体的になっていく。
役者という存在の力に圧倒されました。すげえという他ないです。

プレオーフェンのストーリーを混ぜ込んできたのも上手かったですね。
原作一巻の時点ではそんなに印象的でないキャラにも焦点があたることにより、
現在と過去、親愛と孤独の対比が残酷にも鮮やかに映りました。
だからこそ、あたしも大人になるというレティシャの捨て台詞や
ボロボロになったコミクロン(この時の役者さんの演技マジで凄かった)、
それでも選んだアザリーに対する「俺を失望させないでくれッ!」という
オーフェンの悲鳴に似た言葉がとても重く深く心に刺さりました。

そしてやはり何よりも素晴らしかったのは、舞台ならではの良さがあったこと。
「これならアニメでいい」「これなら小説でいい」そんな思いには一切ならなかった。

かつてはどうであったかはわからないけれど、
今の時代、媒体はただの選択に過ぎないと自分は考えています。
小説だろうとアニメだろうと実写だろうと舞台だろうと、
そこに優劣なんてものは一切なく、
ただその媒体としての武器を存分に活用した作品が優れた作品だろうと。

仕切り越しにアザリーとチャイルドマンが背中合わせで立つのも、
オーフェンとキリランシェロが向き合う対比的な構造も、
空間における位置という舞台全体を活用した演出も、
役者の声の張り、息遣い、足音、そして客席との一体感も。

思い出すだけでワクワクしてくる。
劇場に足を運びたくなる、それってこういう感情なんだ、としみじみ感じました。

原作小説の良さを再認識することが出来、
舞台の面白さも圧倒的な熱量で教えてくれて、
そしてひとつの作品として見てもとんでもなく面白い。

まさに最高傑作。

素晴らしい作品をありがとうございました。
11月公演もある?ようなので、是非見に行きたいですねヽ( ´ー`)ノ