【感想(映画・ネタバレあり)】ドラゴンクエスト ユア・ストーリー

<注意>
この記事は映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」の
がっつりネタバレあり感想となっています。
どうしてもネタバレは見たくないという方はお戻りください。

ただし、もし映画を見るかどうか迷われているようであれば、
自分としては「絶対に見に行かない方がいい」と断言します。

その理由について記載した感想にもなるので、
気にならない方には参考にしていただければとも思います。

読んでみようかな、と思われる方だけスクロールください。



僕が映画を見終えた時に、最初に抱いた感想は、

「人は同じ過ちを繰り返す……まったく……!」

ということでした。

先にお伝えしておくと、実はこの映画、
全体のクオリティ自体はわりとよい方です。

まあ、あの長大な物語を二時間に収める訳ですから、
原作通りとは絶対にいきません。

その中でどのエピソードをメインとするかの取捨選択は、
わりとうまく出来ていた方なのではないかと思います。

ビアンカビアンカというよりただの有村架純であることとか、
リュカ(主人公)が人間としてわりと屑であることとか、
色々ツッコミどころはかなり多かったですけど、
それでもまあ父の死や結婚・出産、そして石化による年月経過と、
ドラクエ5の主要なイベントはうまく押さえられていたと思います。

家族がまた再会してゲマとの決戦に挑んだ時、
「まあ映像も綺麗だし、そこそこは楽しめたのかなあ」などと
ぼんやりと思っていました。

ミルドラース(?)が出てくるまでは……。

ゲマを倒し魔界の門を閉じてハッピーエンドかなと思われた時、
突如として世界は停滞し、リュカ以外は動かなくなります。

映画の公式サイトでミルドラース役の井浦新さんがコメントされていたので、
ミルドラースが出ること自体は知っていた自分は、
「いよいよミルドラース登場か。もう時間ねえけど、どうすんだろ」と
それがただの演出だと思い込んでいました。

しかし登場したミルドラースは、まったく面影のない、
謎のぬるっとした仮面っぽいキャラクターとして出現したのです。

理解が追い付かないままスクリーンを見守っていると、
ミルドラース(?)は突然意味不明なことを言いだします。

「私はウイルスプログラム。ここは作られた世界……」

この時点で嫌な予感しかしません。

そしてその予感を確信に変えるかのように、
主人公が実はかつて名作と謳われたドラゴンクエスト5
リメイクVRアトラクションを体験していた、
現実に暮らす普通の成人男性であることが明かされます。

空想の世界に浸っている主人公に対して、
ミルドラースは何故か説教を垂れます。

「いい歳こいて何ゲームに熱くなっちゃってんのwww大人になれよwww
 あ、僕を作った人はこういう空想の世界が大っ嫌いらしいんで
 この世界壊しちゃいますねwwwww」(意訳)

この時の劇場の冷めた空気の一体感は凄かったです。

どうやら現実世界の記憶をキャンセルされていた(は?)主人公の前に、
今度は謎のワクチンプログラムが出現します(はい?)。
そして意味もなく伝説の剣のような形状に変化し(何で?)、
主人公にウイルスを撃破してくれと頼みます(いや主人公いらんやろ)。

「偽りなんかじゃない。ここで起きたこと、冒険したこと、
 それはすべて僕にとって現実なんだ!(キリッ」

主人公は謎の剣型ワクチンプログラムを手に、
謎の説教ウイルス、ミルドラース(笑)を撃破し、
空想の世界を救いました。めでたしめでたし☆

……。

…。

「人は同じ過ちを繰り返す……まったく……!」

スクウェア・エニックススターオーシャン3の過ちを忘れたの?
また飛び方を忘れた小さな鳥になっちゃったの?

いや、スターオーシャン3はまだいいよ。
スターオーシャン3はあくまで創造物達が主人公で、
創造者の手から離反するという物語なのだから、
1,2のストーリーをすべて台無しにしてしまった罪は大きいけど、
主人公達が足掻く姿には最後まできちんと共感できる。
1,2をまともにプレイしてなかった自分としては楽しめた作品だ。

でも本作の主人公はそうじゃない。現実側の人間。
ミルドラース撃破後にヘンリーや家族と平和を喜び合っても、
「いやそれゲームの世界なんでしょ」
という冷え切った感想しか湧いてこない。

ハイクオリティの映像美とうまくまとめたシナリオで頑張っていたのに、
何故か残り10分ですべてを台無しにするという大暴挙

たぶんなんだけど、監督の主張は恐らくミルドラースなんだよね。
空想の世界にいい歳こいて浸ってんじゃねえよ、っていう。

「大人になれよ」(これは本当に本編中の台詞

それを否定する主人公には全く説得力ないんだもんなあ。

現実と空想を区別出来ていない人達を批判したかったのかもしれないけど、
逆に現実と空想をきちんと区別できるからこそ、
心の底から空想の世界や物語を楽しむことができるのでは、とも思う。

ゲームだけじゃなく、アニメもそうだし小説もそうだけれど、
ありとあらゆる空想の物語に対して
「現実と空想を区別出来ていない」とかいう人達は僕からすれば
「物語を体験して楽しむ能力のない人」でしかない。

そういう人に思い出を思いっきり踏み躙られるという、
今まで見てきた映画の中で最低の映画でしたね。
まだドラゴンボールエボリューションの方がマシなのでは、と思えるレベル。

これがまだ原作なしの映画だったらよかったのに、
何でドラクエでやっちゃうかなあ。

友人を誘って見に行った映画だったのですが、
1800円と二時間を奪ってごめんなさい。

ていうか、思い出を汚してごめんなさい……。

そういう気持ちになった映画でした。
ある意味すごい映画です。真似できないなあ、こんなことは。